研究

研究分野は「エネルギー資源循環工学」です.この分野は「廃棄物管理工学」と密接に関連しています.
「廃棄物管理」とは廃棄物の「資源循環」,「処理」および「処分」を含んでおり,廃棄物に対して,正当化され,合理化された「資源循環」プロセス・システムの設計,二次廃棄物の発生しない「処理」さらには原理的にはゼロにできないため,避けられない最終廃棄物の最終的な「処分」について研究しています.特に,人類の生んだ最強の廃棄物であり,原子力エネルギー利用の体系で発生が不可避である「高レベル放射性廃棄物」について「資源循環」,「処理」,「処分」についての研究を展開しています.

研究成果の例:

 

このビデオは,超臨界二酸化炭素中で二酸化ウランの粉末を溶解して二酸化炭素中に抽出する様子を当研究室の実験室で撮影したものです.超臨界流体は液体と同様の溶解力と気体と同様の拡散力を兼ね備えた流体であり、特に、二酸化炭素は比較的容易に超臨界流体にでき、減圧により溶質を分離することができるために、二次廃棄物が発生しにくく、難除染性物体からの有害物質の除去や新しい生産媒体としての利用が期待されています。
この超臨界二酸化炭素に特殊な界面活性剤等と水溶液を添加することにより、nmスケールで安定化された逆ミセル構造またはこれに類似する構造を実現すると,この微小空間を反応容器として利用し、精密乾燥、精密洗浄、結晶成長、反応生成等を実現することができます。
超臨界流体の強力な拡散性と相俟って、nmスケールでの局所的な水や汚染の除去に利用できるほか、微小空間のテンプレート効果によりnmスケールでの材料創製にも利用可能である等、機能性反応場としての活用の道が拓けます。

この研究では、超臨界二酸化炭素中での逆ミセルやその類似構造の実現方法を明らかにすること、また、それを応用して配管内部や固体中の放射性物質による汚染の除去への適用技術を開発すること、さらに、自己組織化される微小空間のテンプレート効果によりnmスケールでの材料創製技術を開発することを目的としています。

これまでに以下のような研究成果を得ています。

  • 超臨界二酸化炭素中での様々な化学種の溶解に係わる相平衡データの精密測定の手法を明らかにしました.
  • 超臨界二酸化炭素中で逆ミセルを形成するために使用できる界面活性剤および逆ミセル類似構造を形成するために使用できる化学物質を選定できました.
  • nmスケールでの凹凸に埋め込まれた水や無機塩を超臨界二酸化炭素中に実現した逆ミセル構造を用いて除去するための手法を明らかにしました.
  • 配管内部に付着した各種金属の酸化物等を超臨界二酸化炭素中に実現した逆ミセル構造を用いて除去するための手法を明らかにしました.
  • 使用済核燃料からのウランやプルトニウムの回収に見られるような、混合物からの目的化学物質の選択的回収に超臨界二酸化炭素中に実現した逆ミセル類似構造を適用するための手法を明らかにしました.
  • セラミクスであるウランとプルトニウムの混合酸化物から超臨界二酸化炭素中に実現した逆ミセル類似構造を用いて、ウランとプルトニウムを回収することに成功しました.
  • 超臨界二酸化炭素中に実現した逆ミセル構造を用いて、白金、金、銀等のナノ粒子(直径10 nm程度)を製造する技術の開発に成功しました.
  • 超臨界二酸化炭素中に実現した逆ミセル構造を用いて、白金ナノ粒子を金属担体に担持させる技術の開発に成功しました.
  • 高圧水中に形成される超臨界二酸化炭素ミセル中に有機物を抽出し、効率的に超音波を印可することにより有機物分解する手法の開発に成功しました.

革新的かつ実用的な高速増殖炉燃料サイクルを開発する研究

21世紀後半までに次世代の高速増殖炉を実用化しないと世界人類のエネルギー問題が行き詰まってしまうことが明らかになりつつあります.
このため,米国,フランス,中国,インド等が次世代の高速増殖炉サイクルの開発計画を持っています.わが国も「高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究」という長期的な研究を進めてきました.
この研究開発に資するため,名古屋大学発の技術を使って,革新的かつ実用的な高速増殖炉燃料サイクルの開発すべく名古屋大学発信の研究を行っています.この研究は複数の修士論文研究や博士論文研究としても実施されました.

超臨界流体や超音波を駆使する研究

超臨界流体,超微粒子,超音波というように「超」のつく科学技術を応用して,未来のリサイクル技術を開発する研究を行っています.
一例として,超臨界二酸化炭素中で水素同位体交換用触媒を作製する方法の開発に世界で初めて成功しました.
この中間過程では,超撥水膜を作製し,この中に白金の超微粒子(ナノ粒子)を形成して担持させるという精密技術を実現しています.
この研究は修士論文研究としても実施されました.

ガラス固化の研究

高レベル放射性廃棄物の最終処分廃棄体としてのガラス固化体の研究を行っています.
原子力エネルギー利用の「負の遺産」である高レベル放射性廃棄物に対して,人類として責任をもった決着をつけるための研究であることに加え,先進的技術を有しているフランス原子力庁からも高く評価されており,現在は,正式で対等なパートナーとして,共同して学術研究を実施しています.
この研究は複数の卒業研究や修士論文研究として実施されています.

セメント固化の研究

ガラス固化とともにセメント固化は有害物の閉じ込めに有効な方法です.
その処理費用は安価ですが,ガラス固化に比較して閉じ込め性能が劣ることに技術課題があります.
超臨界二酸化炭素を用いて促進されるセメント結晶組織の炭酸変性を活用して閉じ込め性能を向上させる研究を行っています.
この研究は卒業研究としても実施されました.

限りなく廃棄物を少なくする研究

廃棄物を処理することで発生する廃棄物もあります.
例えば,ビニール袋を燃やすことで減容化が図れますが,一方で有害な酸性ガスが発生します.
一般に,カルシウム化合物を用いて吸収することで排ガス中からこれらの酸性ガスを除去しますが,吸収したカルシウム化合物が廃棄物となります.このように煙道中から回収される廃棄物は飛灰と呼ばれ,30%程度を占めるカルシウム化合物の他に,灰分や鉛などの揮発性の重金属が含まれます.このような飛灰中に含まれるカルシウムを酸性ガス吸収剤として再生する研究をはじめとして,廃棄物を限りなく少なくすることにチャレンジしています.
この研究は修士論文研究としても実施されました.

沈まぬ金網

超臨界二酸化炭素中での表面処理によって実現した水に沈まない金網を作って,普通の水に沈む金網と比較した写真.
学部2年生向けのねねルギー理工学概論で原理等についての講義があります.

閉じた原子力燃料サイクル

原子力エネルギーシステムが目指す閉じた燃料サイクルのフロー図.学部3年生向け「原子力燃料サイクル工学」で詳しく学修します.

人類史上初の原子炉を作り上げた科学者,工学者の人たち

エンリコ・フェルミが指導する当時の世界を代表する科学者や工学者が集結してシカゴ大学のフットボール場の地下に建設された人類史上初の原子炉,1942年12月2日に臨界に達して実験は成功した.詳しい説明は学部3年生講義「原子力燃料サイクル工学」であります.

シカゴパイルー1の実験風景の絵画

なぜ絵画なのか?その理由は,当時の最高軍事機密であったマンハッタン計画の一環で,実験の写真撮影は許されていなかったからです.後日になって,実験に参加した科学者と工学者49人からヒアリングしてプロの記録画家が描いたものです.制御棒を引き抜く役と,安全棒つながるマニラ麻のロープが描かれているのが注目すべき点です.

原子炉内で起こる核種生成消滅を総括するグラフ
超臨界二酸化炭素によるウランとプルトニウムの抽出実験結果

史上初

脱カフェインされたコーヒー豆

超臨界二酸化炭素でカフェインレスとされたコーヒー豆の市販品(名古屋市内で購入)

超臨界二酸化炭素抽出装置(原子力燃料用装置)

共同研究

ネフェリンの偏光顕微鏡写真

澤田佳代先生撮影

RuO4の針状結晶の光学顕微鏡写真

酸化物なのに電気伝導性の高い結晶.

二酸化炭素の状態図

純物質の圧力,温度相図

原子力燃料再処理工場の経済性向上

超臨界二酸化炭素抽出技術の応用によって,抜本的に,原子力燃料再処理の経済性を向上する.

超撥水性を示す.ハスの葉の上の水滴
超臨界二酸化炭素に硝酸を溶かし込む

名古屋大学発の革新的発明の一つの記録映像.

金網の上でダンスする水滴

二酸化炭素中で超撥水化した金網ではじかれる水滴の写真

沈まぬ金網

超臨界二酸化炭素中での超撥水処理により,沈まない金網を実現した証拠写真(林田君修士論文研究の成果)

共同研究先の一つであり,澤田佳代先生が滞在していたワシントン州立大学の建物に6月に降る雪の日
ウランの鉱石

黄色い部分が6価のウラン化合物です.黒い部分は4価のウラン化合物です.

米国テネシー州に残るマンハッタン計画時の黒鉛減速原子炉

今でもツアーに申し込めば見学可能です.9.11以前は自由に見学できました.

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