榎田・澤田研究室は,名古屋大学において,榎田洋一(えのきだ よういち)教授と澤田佳代(さわだ かよ)准教授が主宰する研究室です.
その誕生は2001年(今から17年前)の4月に遡ります.
名古屋大学で原子力工学を専門とする工学部准教授であった榎田洋一が教授に昇任し,新しく設立された環境量子リサイクル研究センターのPI(Principal Investigator)として赴任したところから歴史が始まります.
2003年4月には非常勤研究員として化学工学を専門とする澤田佳代が研究室に加わり,両者の専門分野を合わせた「原子力化学工学」の研究と教育を新天地で展開していくことになりました.
「原子力化学工学」では,放射同位元素の製造,核分裂炉による原子力発電およびその燃料サイクルを化学工学の学術手法で扱う分野です.
従って,原子力化学工学技術者は原子力工学と化学工学の2つの分野での知識と経験が必要とされます.
原子力工学分野については,核分裂炉における核反応,核燃料中で重要な物質の性質,システム中で発生する中性子やガンマ線,ベータ線などの性質とこれら放射線の原子炉材料中での反応,吸収並びに減衰についてよく理解している必要があります.
すなわち,原子力工学技術者は,中性子と核燃料を熟知していることになります.
一方で,化学工学技術者は,原子力エネルギー・システムで重要な材料とプロセスの特徴をよく理解するとともに,これらの材料を分離したり精製するための,あるいは,原子力エネルギー・システムで用いられる化学物質または物理的形態に変換するための処理プロセスを熟知していることになります.
原子力化学工学技術者が原子炉について知っておくべき側面としては,二酸化ウラン燃料やトリチウムの製法や原料精製に加え,燃料被覆管用のハフニウムを不純物として除去した高純度のジルコニウムの製造法や冷却材中に含まれる腐食性生物の制御法が含まれるべきと考えられています.
重水炉に関する化学工学的側面としては,重水の中性子照射によって発生する放射性のトリチウムの制御が考えられます.
また,液体金属冷却高速増殖炉について原子力化学工学技術者が検討すべき点には, ウランとプルトニウムの混合酸化物燃料の製造方法や腐食を防止するための冷却材の精製方法に加え,ウランとプルトニウムを資源循環するための照射済み燃料の再処理方法とそれに伴う高レベル放射性廃棄物のガラス固化があります.
原子力化学工学研究室では,これらについて研究指導を通じて社会で通用するに十分な知識を獲得できます.